日本の仏教には様々な種類があって、それぞれ少しずつ法要の作法やマナーが異なってきます。
私自身は、ずっと法事といえば浄土宗で育ってきたのですが、結婚相手の実家は浄土真宗。
「結局同じでしょ?」と思っていたら、ちらほら違いがあって驚くことがありました。
そこでこの記事では、私が実際に浄土宗と浄土真宗で「知らなかった!」と思った違いをご紹介します。
【マナー・作法】浄土宗と浄土真宗の法要5つの違い
まず、様々な違いを知っておく上での大前提として
- 浄土宗=死後四十九日で仏になる
- 浄土真宗=死後と同時に極楽浄土に迎えられる
という違いがあります。
この考え方の違いで、法事やお線香の上げ方の差が出てきます。
①お香典の書き方が違う
浄土宗を始めとする仏式のお香典は、個人が四十九日を迎える前は「御霊前」の表書きにします。
四十九日後は霊が仏になるので「御仏前」と表書きしたお香典をお渡しします。
ところが浄土真宗は「死と同時に極楽浄土に迎えられる(仏様になる)」ので、お葬式の時に渡すお香典であっても「御仏前」の表書きとなります。
②焼香の作法が違う
お焼香の作法も、浄土宗と浄土真宗で少しずつ違ってきます。
項目 | 浄土宗 | 浄土真宗 |
---|---|---|
香をつまむ指 | 親指・人差し指・中指 | 親指・人差し指・中指 |
額へ香を近づける動作 | する | しない |
香をくべる回数 | 3回 | 2回(大谷派) 1回(本願寺派) |
香のつまみ方はどちらも三指なのですが、浄土真宗の場合はつまんだ指をそのまま香炉に持っていき香をくべます。
実家が浄土宗だった私は、最初「香を額に近づける」「3回くべる」と浄土宗流でお焼香させていただいていたので、他の親戚の方々のお焼香を見て「すっきりしたお焼香だなぁ」とぼんやり考えていました。
違いを知ってからは、きちんと浄土真宗流でお焼香させていただいています。
④お線香の立て方が違う
最初に配偶者の実家にお邪魔したとき、まずお線香をあげさせていただきました。
お線香を1本取り出して、ろうそくから火をつけ、線香立ての真ん中に立てます。
…と、ここで配偶者が慌てて「違うよ…!」と寄ってきて、おもむろに線香をぽきっと折るのです!
浄土宗で線香は折らずに立てるのが当たり前だったので、私はびっくりしました(笑)
そう浄土真宗では、線香を折って寝かせるのが正式な方法なんです。
⑤浄土真宗には「位牌」がない
浄土真宗では、故人の魂は亡くなってすぐにこの世を離れ、成仏していると考えるため、魂が宿った位牌を仏壇に置いて供養していく必要がありません。
参考:よりそうお葬式
浄土真宗には戒名(浄土真宗では法名)を記した位牌は必要ないとされていて、代わりに「法名軸」や「過去帳」といった和紙に法名を記しておくのがスタンダードです。
ですが浄土真宗は、戒律の少ない比較的自由な宗派なので、位牌を置くかどうかは各家庭にゆだねられている部分も多いです。
そのため浄土真宗であっても位牌を仏壇に置いている家庭は少なくありません。
⑤浄土真宗には「戒名」がない?
仏門に入り仏弟子になると、その証として名前が与えられます。その名前のことを多くの仏教宗派では「戒名」、日蓮宗では「法号」、浄土真宗では「法名」と呼ぶので覚えておきましょう。
参考:小さなお葬式
浄土真宗では、戒名のことを「法名(ほうみょう)」と呼ぶので、戒名が必要ないと思われることもあるようです。
ですが、浄土宗は戒名・浄土真宗は法名がある方が、お経を読んでもらう時にスムーズです。
相場はどちらの宗派も5,000円~1万円くらいなので、できる限り生前に決めておきましょう。
同じ宗派でも地域やお寺さんにより違うこと
他に筆者が感じた「法事の作法の違い」と言えば、以下のようなことが挙げられます。
- お経の長さ
- お寺さんとの付き合いの濃さ
- お経をみんなで唱えるかどうか
これらの事は、宗派による、というよりも「地域差」「お坊さんやお寺の方針」に左右されます。
たとえば、お経の本の端から端まで唱えるお坊さんもいれば、押さえておく部分だけで軽く終わらせるお坊さんもいます。
また、「マイお経の本」を法事の時にみんな持参して一緒にお経を唱える地域もあります。
特に結婚して地域が変わった場合や、お寺さんとのお付き合いが密な家の法事などは、カルチャーショックを受けるかもしれません。
びっくりするかもしれませんが、最初は周囲の真似をしながら身に着けていってくださいね。