皆さんは「くず湯」を買うとき、原材料表示を確認したことがありますか?
「本葛使用」と大きく書かれていても、原材料の最初に「砂糖、片栗粉…」とあるとがっかりすることもありますよね。
実は葛粉と片栗粉は、お湯に溶くと似たとろみが出るため、代用されることが多いのです。
本記事では、両者の原料・性質・使い方・代用可否・値段などをわかりやすく整理します。
片栗粉と葛粉で違うこと5つ

まず、片栗粉とくず粉に「カロリーや糖質の差はほとんどありません」という事をお伝えしておきます。
項目 | 片栗粉 | 葛粉 |
---|---|---|
カロリー | 330kcal | 347kcal |
糖質 | 81.6g | 85.6 |
タンパク質 | 0.1g | 0.2g |
脂質 | 0.1g | 0.2g |
100gというと、乾燥した状態でカップ1杯分弱なので、お菓子や葛湯にしたときの差は微々たるものになります。
ではくず粉と片栗粉で何が違うかというと、以下の5つの違いがあることが分かりました。
- 原料が違う — 葛粉は葛(クズ)の根、片栗粉は現在は主にじゃがいも由来。
- 使い方が違う — 葛粉は和菓子・冷やして固める用途に強い。片栗粉はとろみ付けや衣に多用。
- 冷めたときの質感が違う — 葛粉は冷めてもしっかり固まる。片栗粉は冷めるとゆるくなりやすい。
- 価格が違う — 葛粉は高価(100gで千円前後)、片栗粉は安価(1kgで数百円)。
- 微量栄養の差 — 葛粉は鉄分やイソフラボンがやや多いと言われる(食品としての効能が期待される理由の一つ)。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
葛粉と片栗粉の違い①原料が違う
その字面から分かるように、
- くず粉→葛(くず)の根から取れるデンプン
- 片栗粉→片栗(かたくり)の寝から取れるデンプン
が原料となります。
ですが、現在日本で流通している片栗粉は「ジャガイモ由来」のデンプンを精製したものが主流です。
より安価で大量生産できるようになったので、かなりお手頃価格で手に入るようになりました。
葛粉と片栗粉の違い②性質(加熱したとき・冷めたとき)
加熱直後のとろみ:どちらもお湯で溶くと透明でとろっとしたとろみが出ます。見た目は似ます。
冷めたときの戻り:ここが大きな差。
- 葛粉は冷めてもしっかり固まる(弾力のあるプルルンとした食感)。
- 片栗粉は冷めるとゆるくダレる性質があるため、冷やして固めるお菓子には不向きなことが多いです。
和菓子や葛餅、くず切り、葛湯(冷凍して食べない場合)など、冷めても弾力を保ちたい料理には葛粉が向きます。
葛粉と片栗粉の違い③使い方の違い(料理別の向き不向き)
くず湯(あたたかい):お湯で溶いてすぐ飲むタイプなら、片栗粉でも十分「くず湯っぽい」食感が出ます。だから市販の葛湯に片栗粉が多く使われているのです(コスト優先)。
くず餅/くず切り:冷やして食べる場合は葛粉推奨。片栗粉だと冷えると柔らかくなりすぎます。
あんかけ(温かい):どちらでも代用可。温かい料理のとろみ付けなら差が出にくいです。
揚げ物の衣・とろみ付け:片栗粉が得意。透明でツヤが出て、濁りにくい。コスパも良し。
葛粉と片栗粉の違い④価格が違う
市販で買う場合、100%のくず粉は100gあたり約1,000円が相場となります。
対する片栗粉は1kgで400円ほど…価格にしてなんと25倍もの差が付いています。
葛粉と片栗粉の違い⑤鉄分やイソフラボンの量が違う
最後に、あまり着目されない違いですが、くず粉の方が「鉄分やイソフラボンがやや多く含まれる」という違いもあります。
このためくず粉は滋養強壮に良いと言われていて、体を温める効果や免疫力をサポートする効果が期待できます。
葛粉と片栗粉に似た「コーンスターチ」は何が違う?
ちなみに、同じようにとろみ付けで使われる「コーンスターチ」もよく目にする粉ですよね。
コーンスターチの特徴としては
- 葛粉や片栗粉に比べて「とろみ」が弱め
- 冷めてもとろみが変わりにくい
- 透明度や艶が出にくい
というものがあります。
上記の特徴を最大限活かしたのが「カスタードクリーム」です。
滑らかなとろみ、冷やしても質感が変わらない、マットな見た目、という特徴はコーンスターチの得意技ですね。
コーンスターチは温かい料理のとろみ付けにも代用できますが、仕上がりが白っぽく濁りやすい点だけ注意しましょう。
料理別:くず粉を片栗粉で代用できる?(使い分けガイド)

- くず湯(温かい飲み物):代用可。温かい内に飲むなら片栗粉でほぼ問題なし。
- くず餅 / くず切り(冷やして食べる和菓子):代用不可に近い。葛粉でないと独特の弾力と透明感は出ません。
- あんかけ(熱々のとろみ):代用可。片栗粉でOKで、コスパも良い。
- 練り菓子や特有の食感を求める和菓子:葛粉推奨。
※代用する場合は分量や加熱時間を調整してください。
片栗粉は生の粉のまま加えるとダマになりやすいので、必ず水溶きしてから加えましょう。
なぜ市販の葛湯は「ほぼ片栗粉」なのか(理由)
- コスト:葛粉は高価。大量生産向きでない。
- 使い勝手:片栗粉でも短時間で似たようなとろみが出るため、消費者の満足度を一定程度確保できる。
- 保存・安定供給:じゃがいも澱粉は安定して供給できるため、製造コスト・在庫管理が楽。
結果として「本葛」を少量ブレンドして「本葛風」とうたう商品が増えています。
実用メモ:家庭での使い方・比率の目安
- くず湯(片栗粉版):砂糖大さじ1、片栗粉小さじ1〜2を少量の水で溶き、熱湯150mlに溶かす。すぐに飲む。
- とろみ付け(あんかけ):水溶き片栗粉(片栗粉:水=1:3〜4)を最後に回し入れてとろみをつける。火を止めてから入れるとダマになりにくい。
- くず餅を作る(本格):本葛粉を使用。水で溶き、じっくり加熱して練る工程が必要。
まとめ:何を重視するかで選べばOK
- コスパ&手軽さ重視 → 片栗粉(とろみ付けや葛湯の代用など)
- 本格的な食感や冷やして固める和菓子 → 葛粉(本葛)
- 冷たいデザートでとろみを保ちたい → コーンスターチ検討
用途に合わせて賢く使い分ければ、家庭料理がぐっと便利になります。
よくある質問(Q&A)
Q1:片栗粉と葛粉、カロリーはどれくらい違いますか?
A:ほとんど差はありません(100gあたり概ね330〜350kcal)。調理での差は主に食感・性質です。
Q2:市販の「本葛使用」製品に片栗粉が混ざっているのは問題?
A:問題ではありませんが、風味・食感の期待値が下がるため「本葛100%」を求める場合は原材料の先頭に「葛粉」と表記された商品を選びましょう。
Q3:片栗粉で葛餅風にはできますか?
A:工夫すれば似た仕上がりにできますが、葛粉独特の透明感と弾力は再現しにくいです。
我が家は片栗粉を常備しています
片栗粉、葛粉、それとコーンスターチの違いを解説しましたが、私が常備しているのは「片栗粉」です。
- 少量でとろみがつく
- 濁りにくい
- コスパが良い
という理由からです。
最近は、とろみ付け用の「粒子が細かい片栗粉」も発売されていて、さっととろみ付けしたい時に便利!
料理の仕上げにさっと一振りするだけで、簡単にあんかけ風のお料理が出来上がります。
(もちろん片栗粉を混ぜる際は、一回火を止めてくださいね…!)
また、揚げ物の衣に片栗粉を混ぜることで、さっくりした食感が簡単に再現できます。
参考:小麦粉とてんぷら粉はどう違う?小麦粉とてんぷら粉の違いと代用は可能か調べてみた
参考:強力粉と薄力粉はどう違う?使う料理や栄養成分の違いを解説